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●同一性の崩壊
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同一性を支えきれなくなると、そこで同一性の崩壊が始まる。子ども自身、自分が何をしたいか、わからなくなってしまう。また何をしてよいのか、わからなくなってしまう。「私は何だ」「私はだれだ」と。「私はどこへ行けばよいのか」「何をすればよいのか」と。それは「混乱」というような、なまやさしいものではない。まさに「自己の崩壊」とも言うべきもの。当然、子どもは、目的を見失う。 |
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●顔のない自分
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同一性が崩壊すると、いわゆる(顔のない自分)になる。で、このとき、子どもは、大きく分けて、二つの道へと進む。(1)自分の顔をつくるため、攻撃的かつ暴力的になる(攻撃型)。(2)顔のない自分のまま、引きこもったり、カラに閉じこもったりする(逃避型)。ほかに、同情型、依存型、服従型をとる子どももいる。顔のない自分は、最悪のケースでは、そのまま自己否定(=自殺)へとつながってしまう。 |
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●校内暴力
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暴力的な子どもに向かって、「そんなことをすれば、君がみなに嫌われるだけだよ」と諭(さと)しても、意味はない。その子どもは、みなに嫌われ、怖れられることで、(自分の顔)をつくろうとする。(顔のない自分)よりは、(顔のある自分)を選ぶ、。だからみなが、恐れれば、怖れるほど、その子どもにとっては、居心地のよい世界となる。攻撃型の子どもの心理的のメカニズムは、こうして説明される。 |
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●子どもの自殺
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おとなは、生きるのがいやになって、その結果として、自殺を選ぶ。しかし子どものばあいは、(顔のない自分)に耐えきれず、自殺を選ぶ。自殺することによって、(自分の顔)を主張する。近年ふえているリストカットも、同じように説明できる。リストカットすることで、自分を主張し、他人からの注目(同情、あわれみなど)を得ようとする。「贖罪(しょくざい)のために、リストカットする」と説く学者もいる(稲富正治氏ほか)。 |
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●自虐的攻撃性
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攻撃型といっても、2つのタイプがある。外に向って攻撃的になる(校内暴力)と、内に向って攻撃的になる(ガリ勉、猛練習)タイプ。「勉強しかしない」「勉強しかできない」「朝から寝るまで勉強」というタイプは、後者ということになる。決して、勉強を楽しんでいるのではない。「勉強」という場で、(自分の顔)をつくろうとしていると考えるとわかりやすい。近年、有名になったスポーツ選手の中には、このタイプの人は少なくない。 |
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●自我の同一性
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(子どもがしたがっている)ことに、静かに耳を傾ける。そしてそれができるように、子どもの環境を整えていく。そうすることで、子どもは、(自分のしたいこと)と、(自分がしていること)を一致させることができる。これを「自我の同一性」という。この両者が一致している子どもは、夢や希望もあり、当然、目的もあるから、見た目にも、落ちついていて、どっしりとしている。抵抗力もあるから、誘惑にも強い。 |
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●心の抵抗力
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「私は〜〜をしたい」「ぼくは〜〜する」と、目的と方向性をしっかりともっている子どもは、心の抵抗力も強い。外部からの誘惑があっても、それをはねのける。小学校の高学年から中学校にかけては、その誘惑が、激増する。そうした誘惑をはね返していく。が、同一性が崩壊している子どもは、生きザマが、せつな的、享楽的になるため、悪からの誘いがあると、スーッとその世界に入ってしまう。 |
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●夢や希望を育てる
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たとえば子どもが、「花屋さんになりたい」と言ったとする。そのとき重要なことは、親は、それに答えて、「そうね、花屋さんはすてきね」「明日、球根を買ってきて、育ててみましょうか」「お花の図鑑を買ってきましょうか」と、子どもの夢や希望を、育ててやること。が、たいていの親は、この段階で、子どもの夢や希望を、つぶしてしまう。そしてこう言う。「花屋さんも、いいけど、ちゃんと漢字も覚えてね」と。 |
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●子どもを伸ばす三種の神器
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子どもを伸ばす、三種の神器が、夢、目的、希望。しかし今、夢のない子どもがふえた。中学生だと、ほとんどが、夢をもっていない。また「明日は、きっといいことがある」と思って、一日を終える子どもは、男子30%、女子35%にすぎない(「日本社会子ども学会」、全国の小学生3226人を対象に、04年度調査)。子どもの夢を大切に、それを伸ばすのは、親の義務と、心得る。 |
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●役割混乱
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子どもは、成長するにつれて、心の充実をはかる。これを内面化というが、そのとき同時に、「自分らしさ」を形成していく。「花屋さんになりたい」と言った子どもは、いつの間にか、自分の周囲に、それらしさを作っていく。これを「役割形成」という。子どもを伸ばすコツは、その役割形成を、じょうずに育てていく。それを破壊すると、子どもは、「役割混乱」を起こし、精神的にも、情緒的にも、たいへん不安定になり、混乱する。 |
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●思考プロセス(回路)
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しかし重要なのは、「思考プロセス」。幼いときは、「花屋さんになりたい」と思ってがんばっていた子どもが、年齢とともに、今度は、「看護婦さんになりたい」と言うかもしれない。しかし幼いときに、花屋さんになりたいと思ってがんばっていた道筋、あるいは思考プロセスは、そのまま残る。その道筋に、花屋さんにかわって、今度は、看護婦が、そこへ入る。中身はかわるかもしれないが、今度は、子どもは、看護婦さんになるために、がんばり始める。 |
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●進学校と受験勉強
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たいへんよく誤解されるが、「いい高校」「いい大学」へ入ることは、一昔前までは、目的になりえたが、今は、そういう時代ではない。学歴の権威を支える、権威主義社会そのものが崩壊してしまった。親は、旧態依然の考え方で、「いい大学へ入ることが目的」と考えやすいが、子どもにとっては、それは、ここでいう目的ではない。「受験が近いから、(好きな)サッカーをやめて、受験塾へ行きなさい」と子どもを追うことで、親は子どもの夢をつぶす。「つぶしている」という意識すらないまま……。 |
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●これからはプロの時代
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これからはプロが生き残る時代。オールマイティなジェネラリストより、一芸にひいでたプロのほうが、尊重される。大手のT自動車の面接試験でも、学歴不問。そのかわり、「君は何ができるか?」と聞かれる時代になってきている。大切なことは、子どもが、生き生きと、自分の人生を歩んでいくこと。そのためにも、子どもの一芸を大切にする。「これだけは、だれにも負けない」というものを、子どもの中につくる。それが将来、子どもを伸ばす。 |
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●大学生の問題
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現在、ほとんどの高校生は、入れる大学の入れる学部という視点で、大学や学部を選んでいる。もともと、勉強する目的すらもっていない。そのため、入学すると同時に、無気力になってしまったり、遊びに夢中になってしまう大学生が多い。燃え尽きてしまったり、荷おろし症候群といって、いわゆる心が宙ぶらりんになってしまう子どもも多い。当然、誘惑にも弱くなる。 |
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